デザイン事務所を立ち上げ、クリエイティブディレクターとして活躍されているかたに、起業までの道のりやバイト経験から得たことなどをインタビューしました!

「やりたいこと」をやっていたらWEBデザイナーに

大学時代はテクノやDJブームの全盛期。よく友人と一緒にクラブイベントを企画していました。大学でプログラミングを学んでいたので映像ソフトをつくり、音に合わせて映像を映し出すビジュアルジョッキー(VJ)のようなことをやっていたら、『Windows95』が発売されインターネットがすごい勢いで社会に広まるITバブルに。プログラミングを書けることが重宝され、WEBのシゴトがどんどん入ってきました。

ただ、単位を落として留年してしまい、親からの仕送りがストップ。学生向けWEBデザイナーのコンテストが「賞金50万円!」と高いことを知り、あちこちに応募しまくって一時期賞金だけで生活していたこともありました(笑)

卒業後は“長めの卒業旅行”と称して半年間、兄がいるオランダを拠点にヨーロッパを旅行し、帰国後に東京のデザイン事務所に就職。1年ほど籍を置いて、そのままフリーランスになり、2007年に法人化してから、早くも10年が経ちました。振り返ってみると、学生のときからWEBに関わったり、コンテストで技術力を試したりしていたことが、そのままシゴトになっていますね。

ユーザーとの接点を結んだのはパチンコバイトの経験!?

WEBデザイナーのキャリアをスタートしたころに出会った言葉があります。「クリエイターには3つの段階がある。まずは『自分とどう向き合うか』。技術力やデザイン力を高め、個人の能力をつける。そして、人との関わり合いの中で『人とどう向き合うか』を考える。最後に『社会とどう向き合うか』を考え出す」。

今は誰もがスマホを利用して、インターネットを持ち運ぶ時代。IT業界は広く社会と向き合っています。そんな中、僕がプログラミングしたりデザインしたりしているものは、ユーザーとの“接点”の部分です。かっこいいものをデザインすればいいわけでなくて、ユーザーや社会にどう役に立つのかを考えなければなりません。

実はそこに活きているのがバイト経験です。大学時代はカラオケ、パチンコ、引越、バー、カフェなどのバイトをやりました。「たとえば、『KIRIN』が展開するクラフトビールブランドの店舗で使うデジタルスタンプブックサービス『ビアログ』を触っているユーザーは、こういう生活をしている人なんだろうな」と利用者の“生活が見える”のは、いろいろな種類のバイトを経験していたおかげです。一見、ITとはまったく関係のなさそうなパチンコバイトなど、リアルな人間模様が交差するバイト経験が特に役立っています。

きっと、WEBデザイナーのシゴトは、バイトで経験してきたサービス業と変わらないのだと思います。バーのバイトでお客さまにおいしいカクテルをつくるのと、こういうサービスが欲しいという社会ニーズに合わせたサービスをつくるのは同じこと。“おいしいカクテル”といっても、相手が求めている“おいしい”は、想像力がないと提供できません。そこから思考が始まり、対話が生まれます。

バイト時代にやっていた、face to faceでのアナログなコミュニケーションから、スマホなどのテクノロジーを媒介するコミュニケーションに変わっただけ。そう思っています。

社会に必要とされるものを生み出すシゴト

起業してからは、WEBのデザインやプログラムを書くだけでなく、チームを抱えプロジェクト全体の責任者として関わるクリエイティブディレクターの立場になりました。企業から大きなプロジェクトを依頼されることも多く、長いものでは半年から数年携わるものもあります。

たとえば2011年の『集英社』のサイト制作も大きなプロジェクトでした。青年コミック誌『週刊ヤングジャンプ』編集部のWEBサイトやデジタル配信サービスをつくったのですが、そのころからデジタル配信が『集英社』の重要な事業戦略にもなっていきました。企業の重要な部分を担っているんだという責任は重くて大変だったけど、おもしろかったですね。ただデザインするのではなくて、世の中に機能するものを生み出せるのが、このシゴトのやりがいです。

将来を担う子ども向けのサービスをつくりたい

子どもができてから、社会の見えかたが変わってきました。子どもの目を通して社会を見てみると、新しい発見がたくさんある。僕らの学生のときと違って、今の子どもたちは完全なデジタルネイティブです。小さいころからスマホを手に取ってインターネットに触れている世代。そこにAI(人工知能)が加わるとどうなるんだろうと、ワクワクしています。今後は、そんな子ども向けのサービスやモノをつくっていきたいですね。

技術もどんどん進歩していますから、インターネット級の技術革新や、スマホの登場のような生活を大きく変える技術が入ってくるのは間違いないし、これからもっともっと便利な社会になると思います。そんな時代だからこそ、人間臭いこともやっておきたいと思っています。

学生のときほど、いろいろな“人種”に会える機会はありません。シゴトを始めると、違う業界の人と出会う機会は少なくなるし、特にIT業界はメールやオンラインでやりとりすることが多いため、たくさんの人と直接会ってコミュニケーションする体験ができるのは、案外学生のうちだけかもしれません。

最近のIT業界は、「ユーザー体験」がキーワードになっています。“体験”をつくるのに、自分の人生体験が薄ければ何もつくれません。興味を持ってさまざまなことにチャレンジしたことが、あとになって活きてくるはずです。

バイトしてお金を貯めて、旅行するというのもいいですね。すべて見知らぬものだと、心が動くこともあるし、異文化ではコップひとつとってもデザインが違うから、そこから学ぶことはいっぱいあると思います。僕も学生のうちにもっと旅行したり、もっとバイトしたり、バーの経営なんかもしてみたかったですね。