英会話教室『いちょう通りランゲージ』を開業して活躍されているかたに、起業までの道のりや役立っているバイト経験などをインタビューしました!

自分が何をしている者なのか 説明できる人になりたかった

「Who are you?」あなたはどういう人なの、と聞かれて、外資系証券会社を辞めたばかりの私は答えられませんでした。シゴトを辞めて中国に1年間の留学をしたとき、外国人の友人たちからよく聞かれる質問だったんです。学生なら“Student”だし、シゴトがあれば職種を伝えればいい。でも25歳でフリーターの私は何も答えられない。自分のことを説明できない状況はまずいぞと、模索しながらのシゴト探しが始まりました。

英語と中国語が話せるスキルを活かして、自転車雑誌の出版社ではたらき、帰国してからも翻訳やイベントのシゴトに明け暮れました。そんなとき、声をかけられたのが日本語学校の営業です。海外出張でいろいろな国の日本語学校に出かけ、日本に留学してくれる学生の募集を行うシゴトでした。英語も中国語も活かせる、とてもやりがいのあるシゴトでした。どんなに大変なシゴトでも、喜んでくれる人がいることを直接見られる現場だったのでまったく苦にならなかったですね。

その一方で、英語と中国語は話せるけど教えるスキルはない。それならと、結婚・妊娠をきっかけに英文学科がある通信制の大学に入り直しました。教員免許を取得し卒業後は、子育てをしながらでもはたらける塾のバイトを選びました。でも、せっかく教えるスキルを身につけたのに、塾の方針に従って教える英語は、文法が中心で面白味がない。もっと楽しく教えたくて、英語を勉強したいと言うママ友を自宅に呼んで教えることにしました。

最初は5人ほど、どんどん広まって人数が増えたこともあり、2008年に英会話教室『いちょう通りランゲージ』を立ち上げました。2017年現在ではスタッフ10名、生徒数は当初の20倍以上ほど。もし、今「Who are you?」と聞かれたら、迷いなく「Teacher」と答えられます。

証券会社で稼いだ高収入より、初めて英会話を教えて得た1000円のほうがうれしかった

学生時代はバイト探しで情報誌の「an」を買っていました!初めてのバイトは、ケーキ屋でイチゴを盛りつけるシゴトでした。正直言うと、長時間立って同じ作業を繰り返すシゴトは自分には向いていなかったですね。そのバイトをしたおかげで苦手なことのひとつがわかりました。

そのあともたくさんのバイトをしましたが、中でも得意な英語を使った翻訳や塾のバイトが一番楽しかったです。生徒とのふれあいや教える楽しさを知りました。楽しいな、おもしろいなと思ったことが、まわり回ってカタチになったのがこの英会話教室です。

私の家族は父も姉も学校の教師、そして母は塾をやっていました。だからこそ先生に抵抗があって、「先生には絶対ならない!もっと華やかな世界でシゴトをしたい」という思いがありました。そんな私が結局、先生をしているから不思議ですね。

新卒で入った証券会社は、確かに華やかでお金もいっぱい稼げました。でも、自宅で初めて英会話を教えたとき、レッスン代として受け取った1000円は、証券会社時代の給料と重みが違いました。この1000円は大切に使いたいと思いましたし、本当にうれしかったんです。

時間はお金では買えない。だから、学生時代に時給でバイトを選んだのは、もったいなかったかなとも思います。やりたいバイトやシゴトを選ぶべきですよね。

好きなことをシゴトにすれば毎日が楽しいことばかり

現在は、英会話教室の経営者として私がバイトを雇用する立場。塾のバイト経験者だからこそスタッフの気持ちも理解できます。生徒への教えかたで悩むスタッフには、「誰のマネもする必要はないから、自分自身の“ウリ”を考えてやってみて」とアドバイスしています。

先生は、生徒の興味を引き出すために、エンターテイナーになることが大事です。ひとつ教えるにも、360度いろいろな角度から切り込んで、生徒の反応がなければ、別の引き出しからほかの見せかたを探して教えていく。そのためには人間観察と社交性が必要です。だからスタッフには、「学生のうちにたくさんバイトを経験しておくといいよ。いろいろなことがわかるよ」と話しています。バイトを通して、自分の得意なことや苦手なことに気づけるようになりますから。そこから観察力や社交性も磨かれていきます。

好きな英語を使ってシゴトをしている今は、本当に楽しいことがいっぱい!「土日も英会話教室のシゴトがあって大変だね」と自分の子どもから言われることもあるけど、毎日楽しいから全然大変だとは思っていません。それに、生徒が英語を通じて世界に興味を持ち、周りとの関係性を深めていく、そんな姿を見られるのは楽しいもの。ほかにも、検定に合格して喜んでいる生徒を見たり、「先生ありがとう」と感謝されたりすると、生徒の人生に影響を与えているんだと実感します。

先生と生徒の距離が近い教室にしたい

英語はただ言葉としてのツールではなく、他国の文化や考えかたを知る強力なツールでもあります。『いちょう通りランゲージ』のスタッフは、帰国子女、ネパール人、フィリピン人などさまざまな国籍を持つバイリンガル講師です。文化や生活習慣が違う先生とシゴトをしたり、話したりしていると、考えかたや宗教の違いで、発見することがたくさんあります。もっともっと世界に目を向けてみると、知らないことがたくさんあるし、おもしろい考えを持つ人が大勢いる。それを知ることができるのも、英語というツールがあるからです。

他国の文化やいろいろな考えの人がいるということを、英語を勉強しながら生徒に知ってほしいと思っています。だから、上辺だけではなくて人の温かさを感じられる「人間臭さ」というのかな、先生と生徒の距離が近くて、話しやすい、そんな教室を目指しているんです。