ドッグトレーナーとして活躍されているかたに、独立までの道のりや役立っているバイト経験などをインタビューしました!

好きなことをシゴトにする人生を選んだ

高校を卒業しても、やりたいことが見つからない。だから1年間フリーターをしながら、将来について考えました。最初は密猟者から動物を守るレンジャーになりたいと思ったんです。動物番組が大好きで、団地育ちでペットを飼えなかったから、ペットを飼うことへの憧れも人一倍強かったのでしょうね。そこで、動物について学べる専門学校に入りました。

動物に関する知識をひと通り身につけましたが、日本では動物やペット業界に関わるシゴトは女性が多く、男性向きではないんです。それに加えてものすごく給料が安い。結果的に、実習先の訓練所で家庭犬トレーニングに興味をもってドッグトレーナーの道を選びましたが、住み込みではたらいて初任給は5万円でした。

専門学校卒業後、“修業”に出たのは、問題を抱える犬を預かってトレーニングをする訓練所です。4年間住み込みで実践と訓練を積みました。当時、独立まで5年といわれていましたが、たくさんの犬と関わるうちに「自分でやってみたい」という思いが強くなり、4年で飛び出して独立しました。

楽しいだけじゃない!責任のあるシゴトを実感する日々

ドッグトレーナーには、いろいろなシゴトがあります。警察犬や盲導犬、聴導犬、介助犬のトレーナーもいますが、僕の場合は家庭犬といって、いわゆる一般家庭で飼っているペット犬をトレーニングするシゴトです。無駄吠えが困るとか、噛むクセがあるとか問題を抱えたペットを持つ飼い主から依頼を受け、訓練して問題のクセを直していきます。

飼い主が愛犬とより幸せな生活を送るお手伝いができることはとてもうれしいことですが、大変なこともたくさんあります。トレーニング中に噛まれたこともありますし、噛まれる夢をみて飛び起きることも。

修業をしていた訓練所は、50頭前後の犬を3人体制で見ていました。夏場は朝5時半に起きて、犬舎の掃除をし、所定のトイレに犬を連れていき、ごはんをあげる。それがひと通り終わってから、自分たちの朝ごはんです。

何十頭の犬を世話しながら、トレーニングをしたりブラッシングをしたり、運動をさせたり。本当に秒刻みのスケジュールでしたし、体力も必要です。独立してからは、朝4時45分起床で毎月10頭ほどのペット犬を担当して、それぞれの家庭に出張しています。動物が相手ですから、簡単に休むこともできない責任のあるシゴトです。

幅広いバイト経験で広く世の中を知る

専門学校のころからバイトを転々と経験して、写真の現像、ファミリーレストラン、交通整備、それから新聞配達もしました。新聞配達は朝早いシゴトでしたけど、今でも生活に根づいていますし、ファミレスでのバイトは衛生管理の大切さを学べて、動物を相手にするシゴトでも多いに役立っています。ドッグトレーナーは犬が相手とはいえ、飼い主の協力が必要不可欠でコミュニケーションが大事。お客さまとの接しかたはバイトで学んだ部分が大きいと思います。

特にドッグトレーナーになるために選んだバイトではありません。そのときどきの条件に応じてやっていたさまざまなバイトですが、考えてみると、まったく方向性の違う写真の現像のバイトも今に役立っています。1日200~300本のネガフィルムを現像するのですが、色の補正をするのに、1コマずつ長い時間をかけていられませんから、瞬間的に判断することが求められます。考える瞬発力が身についたのもバイトのおかげですね。

ドッグトレーナーの多くは、学校を卒業してすぐ専門の道に進むため、その世界しか知ることができませんが、学生のうちにいろいろなバイトをしていたので、広く世の中を知ることができました。特に10代後半から20代は多感な時期なので、すごく刺激を受ける。その経験が視野を広くし、人間としてのおもしろみを出すのだと思うんです。そういう意味では、いろんなバイトを経験しておいてよかったと思います。

「やったかい」のあるシゴトをしたい

よく「やりがい」を聞かれますが、答えるのが難しいんです。「やりがい」ではなくて「やったかいがあったかどうか」が重要なのだと思います。飼い主がトレーニングを頼んで良かったと満足して、それを自分自身が実感して、はじめてやったかいがあった、といえます。もちろんトレーニングを受ける犬も、尻尾を振って楽しそうに矯正されていくことが大事です。

犬も含めてペットには決定権がなく、幸せや生死まで飼い主や人間に委ねられています。だからこそドッグトレーナーは動物に対して常に配慮して、喜びや痛みに気づけるように勉強し続けなければいけません。ですから問題の直しかたも、ひとつのメソッドに当てはめるのではなく、これまでの経験や知識から得た方法の中から、犬の個性に合わせた柔軟なトレーニングを行っています。これからも動物について学び続けて、今後は自分が経験したことを次のドッグトレーナーに伝えていく活動も進めたいと思っています。