美容師として独立されたかたに、独立のきっかけや、今でも役に立っているバイト経験についてインタビューしました。

美容師は、人との繋がりがとても大きなシゴト

2013年、36歳のときに、都内でも静かな住宅が立ち並ぶ大田区大岡山に店を構えました。10年間はたらいた以前のサロンでは、スタッフの教育係も任され、さまざまな経験を積み、独立が実現しました。美容師を志したときから独立すると決めていたため、資金も計画的に貯金。自己資金額は事業で必要な資金の3分の1といわれているので、最終的には2分の1の約800万ほどを用意しました。

内装はお客さまがくつろげるように席を少なくし、ゆったりとしたスペースに。また、2階建ての立地を利用し、1階と空間をさえぎられた2階はヘッドスパのサービスも提供しています。住宅街のため、子育て中のかたも多く、みなさん朝が早いんです。子どもの送り時間に合わせ、9時にオープンにしています。朝のほうが案外混み合いますよ(笑)。

美容師のシゴトは、お客さまとともに年を重ねます。接客業の中でも、ここまで長時間、長い年月、携わるシゴトはなかなかないでしょう。たとえば常連さんであれば毎月約3時間お店にいますので、1年間で1.5日は一緒にいる計算になります。だからこそ、人と人との繋がりがとても大きく地域に根づき、生活の一部に溶け込むシゴトをしていることに、とてもやりがいを感じています。

バイトのマイルールは「半年以上、1年未満」勤務

高校生から大学生まで、10種類以上のバイトをしました。そのころ、将来やりたいことを見出していなかったため、いろいろと経験を積もうと思ったからです。はたらくお店に迷惑をかけないように半年以上続けること、でも1年未満まで、と決めていましたね。

最初は人と接しないバイトばかりを選んでいました。コンビニのお弁当をつくる工場で、もくもくとはたらいていたこともあります。人見知りだったので、接客というのは苦手というか……、避けていたのです。

でも、一緒にはたらくスッタフ同士のコミュニケーションもあまりなかったため、思い切って接客業のバイトに挑戦してみました。そしたら、人と関わるシゴトのほうが楽しかったんです。最も印象に残っているのは、接客業で初めてはたらいたドーナツショップでのバイト。すごく緊張したので、今でも最初に接客をしたお客さまの顔も様子もしっかりと覚えています。

それから大学時代には、ファストフード、レンタルショップ、レストラン、ドラックストア、ボーリング場、ピザの配達など、さまざまなバイトを経験。結果的に接客業が一番多くなりました。

実は、実家は美容室を営んでいて、1階が美容室、2階が自宅という環境で育ちました。だから美容師のシゴトは最も身近なものだったのです。そのぶん大変な面もよくわかっていたので、大学卒業後は一般企業に就職しました。でも、いざ社会に出たら、すぐに「なにか違うぞ!」と。バイトで接客業をいくつも経験していたため、思い返すと、シゴトをしてお客さまが笑顔になってくれることって本当にすごいことなんだなと気がついたのです。

結果的に会社にいたのは1年にも満たなかったのですが、美容師というシゴトに就きたいと思ったきっかけは、ただ「髪を切りたい」から始まっているのではなく、お客さまと直接触れ合え、笑顔で感謝して頂けるシゴトは、なかなかないと思ったからです。

“大人を接客する”経験が役に立った

会社を辞めてすぐにサロンに勤めました。はたらきながら3年かけて通信教育で美容免許を取得。その間、一緒に頑張っていた仲間がどんどん辞めてしまったけれど、私の場合は辞めたいとか考える余裕がないほど、朝昼晩、休みの日も練習漬けでした。それが大変だったというより、学生時代からやりたいことをやり、サラリーマンも経験したからこそ、今は遊ぶときではなく、これから先のことを考えて集中する時期だ!と、がむしゃらにはたらきました。

美容師は技術だけのシゴトではありません。電話で予約を受けたり、カウンセリングやお客さまとの会話など、接客面も多いんです。さまざまな世代のお客さまが来店されるので、自分の年齢の倍以上のお客さまを接客することも日常茶飯事。たくさんのバイトを経験していたおかげで、入社したばかりでしたが、店長に電話の対応を褒められました。年上のお客さまにも、スムーズに対応できたのだと思います。接客のバイト経験は、社会に出たとき、思った以上に自分のためになりました。

スタッフが将来不安なく、幸せにはたらけるサロンを目指したい

美容師は、一見華やかで人気の職業ですが、離職率が高いシゴトです。だから、いかにスタッフが辞めない店にするか、ということを重視しています。スタッフが幸せにはたらけるかどうかが、僕の生きる道にもつながりますし、結果、お客さまを幸せにできるはずだと思うのです。

今一緒にはたらいているスタッフのひとりは、お客さまとして彼が中学生のときに出会いました。のちに美容師になりたいという相談を受け、彼が美容学生のときには同じサロンでバイトとして一緒にはたらいたこともあります。彼が美容師になり別のサロンへ就職したのですが、私が独立にするにあたり、サロンの方向性に共感して一緒にはたらくことになりました。大きく風呂敷を広げ、何年後かにはサロンを何店舗にも広げるイメージはありません。まずはスタッフが不安なくはたらける環境にし、大事に育てていきたいと考えています。