起業してゲーム制作ディレクターとして活躍されているかたに、起業までの道のりや今後の目標をインタビューしました。

目標を叶えるために、起業にチャレンジ

『グラティーク』を設立したのは、29歳。「30歳までに起業する」というひとつの目標が叶いました。といっても、以前から「ゲーム会社をつくる」と決めていたわけではないんです。たとえば大好きなアニメやゲームの日本製のフィギュアを海外に向けて販売するサイトを運営する会社もいいな、なんて考えていた時期もありました。いろいろアイデアや想いはあったけれど、行動に移せないまま時間が経っていたのです。

そんな中で『グラティーク』が生まれたのは、タイミングがうまく合ったから。一緒に会社を立ち上げたのは、前職の会社の先輩。その人から「独立しないか」と誘われたのがきっかけです。当時のシゴトは、今と同じゲーム制作のディレクター。これまで販売や飲食、コールセンターのオペレーターなど、さまざまな職種を経験してきましたが、1番楽しいと感じられたシゴトでした。

「このシゴトなら、一生続けられる」という確信もあったけれど、不満もありました。当時の会社は、いわば開発の下請け。大手のゲーム会社などのクライアントから、すでに決まった企画や仕様を渡されて、それに合わせて依頼通りに開発を行う会社でした。だから、もっと自由に、自分が考えたゲームを手がけたいと思っていたんです。

ただ自分はプログラマとして高い技術を持っているわけではなく、経験も浅い。大手のゲーム会社に転職をしても、給料の天井は見えていた。そのジレンマに悩んでいるときに、独立の話に誘われました。誘ってくれた先輩は、立案した企画を売り込む営業、ゲームの開発を受注する営業、そして自分と同じゲーム制作のディレクターなど、幅広くゲーム開発すべての業務をこなしている尊敬する先輩。また、先輩の先輩で、経験豊富なプログラマも一緒に起業することになっていました。この3人でなら、自分たちのつくりたいゲームの企画を考え、それを売り込める。そして自分たちでゲームの開発もできる。起業してもうまくいくんじゃないかと思え、「チャレンジしてみよう」と決断できたんです。

軌道に乗るまでは苦難の連続

自分たちで考えた企画を売り込み、ゲームとしてリリースすることは、今まで以上にやりがいを感じられるシゴトです。自由に何でもできることがこんなに楽しいとは、想像以上でした。でも、楽しいことだけではありません。

ゲームアプリの開発期間は約2~3ヶ月。プロジェクトによっては、リリースが完了してから代金が支払われる場合があります。会社員であれば毎月一定の額の給料が支払われますが、自分たちで会社を運営していると、収入がなければ給与は出ません。一方で、開発を依頼している協力会社には支払いを行わなければならない。設立してしばらくは、無給の期間がありましたね。そういった事態を避けるために、いくつものプロジェクトを並行して走らせ、キャッシュフローを考えています。

今は3人だけの会社なので、常に全員が最前線ではたらく必要がある。そこで、会社の経営状況や抱えているプロジェクトの進捗状況などは、定例会議を決めて、オンライン電話で報告し、情報を共有し合っています。今まで経験したことのない大変さではありますが、それもまた新鮮で楽しいところでもありますね。

バイトやシゴトを通して気づいた「人と接するシゴト」の楽しさ

「楽しいことをやりたい」という想いで、いろいろなことをしてきました。「東京に出たい」「好きなファッションを学びたい」と高校を卒業して、東京の服飾専門学校に入学。卒業後は「好きなフィギュアに関わるシゴトがしたい」と玩具販売会社の契約社員に。

そのあとは25歳まで、フリーター。飲食店やサービス業など、そのときどきで自分の好奇心に身を任せて、職場を転々としていましたね。IT系の会社でバイトをしたときには、プログラミング自体もおもしろかったですし、はたらいていた会社がすごい勢いで成長をしていたので「いつか落ち着いてはたらくなら、IT業界がいいかも」と思いました。でも結局はイギリスに語学留学に行くことに。動機は英語を学びたいというのもありましたが、正直言うと「イギリス出身の大好きなDJを近くで見たい」と超ミーハーなもの(笑)英語を勉強しながら、音楽を楽しみ、現地の日本食レストランなどでバイトもしました。

そして、帰国後にIT系、それもゲーム開発をする会社に就職。昔から遊んでいたゲームをシゴトにすることは、とても楽しかったです。でも、それ以上にディレクターとして人と話し、人をまとめ、プロジェクトを動かして、ひとつのゲームをつくっていくというシゴトに楽しさを感じました。それまでさまざまなシゴトをする中で、「人と接するシゴト」が好きだし得意だとは感じていましたが、ディレクターはその集大成のような感覚がありました。それで「このシゴトなら、一生続けられる」と感じたんです。

最高の瞬間があるから、頑張れる

会社を設立してからは、ゲーム制作ディレクターとして、開発会社のプログラマやクライアントの担当者など、これまで以上に多くの人と接し、まとめ、プロジェクトを進める役割を担うようになりました。プロジェクトを動かしていると、ある瞬間、関わっている人全員の気持ちがひとつになったと感じるときがあるんです。すると、そこから開発が一気にスピードを上げて進んでいく。ディレクターとして、最高に気持ちいい瞬間ですね。

そういう瞬間があったゲームは、完成度も高く、多くの人に楽しんでもらえる作品になる。開発に関わる人と密に話をして、その最高の瞬間を生み出せるようにするのが、ディレクターのシゴトのキモだと思っています。そして、楽しく、やりがいがあり、一生をかけてもいいと思っているところでもあります。いつかは会社オリジナルのゲームで、その瞬間をみんなと味わえたらいいな。それが今の目標ですね。