バイトで積んだパティシエの経験を活かし、自宅でお菓子教室を開く夢を叶えたかたに、やりがいやこれまでの道のりなどをインタビューしました。

ペンションのバイトでパティシエを志す

初めてのバイトは高校生のときです。まかないつきのラーメン屋や蕎麦屋ではたらいていました。部活が終わってからバイトに行き、まかないを食べて帰っていましたね(笑)。高校卒業後は会社員として5年ほどプログラミングのシゴトをしていましたが、幼少期から思い描いていた「ペンションではたらきたい」という夢を捨てきれずに、23歳で退職し、長野県白馬村のペンションで住み込みのバイトを始めました。

住み込みですから、時間はたっぷりあります。アットホームなペンションで、オーナーの奥さんがデザートやお菓子を手づくりしてお客さまに提供していました。そのお菓子づくりを手伝っているうちに、とても楽しくなって、気がついたらのめり込んでいました。

自分がつくったお菓子を「美味しい」と言ってもらえた嬉しさから、本格的に勉強してみたいとの気持ちが膨らみ、26歳のときに製菓学校『ル・コルドン・ブルー東京校』へ入校。夜間コースでしたから、昼間はビュッフェ用のケーキを製造するバイトをしながら、パティシエの道を歩き出しました。

お菓子といっても、ケーキなどの生菓子からクッキーなどの焼き菓子までさまざまです。製菓学校で基礎を磨いたあとは、とにかくいろんな分野を経験してみたいという思いがあり、1年ごとにお店を変えて経験を積みました。地元・埼玉の洋菓子店ではたらいたり、フランス料理店のデザート部門を担当したり、ブライダル併設のレストランでウェディングケーキをつくったり。デパ地下のガラス張りになったキッチンで、ひたすらケーキにデコレーションをするバイトもしていましたね。

さまざまなシゴト先に飛び込むのは冒険でもありましたが、それよりも、いろんなことを知りたいという思いが強かったので、バイト先を変えることに抵抗はありませんでした。このお店で何を学べるのかなと毎回ワクワクしていたくらいです。

たくさんのバイト経験が道を決めた!

バイトやシゴトをしていて気づいたことはたくさんあります。パティシエは立って作業することが多く、とても体力のいるシゴトだということ。それから、たくさんお菓子をつくっても、売れ残りが出ると捨ててしまわなければいけないこと。喜んでもらえる一方で、廃棄ロスの問題には心を痛めました。

それならば、ペンションではたらいていたときのように予約をもらって、必要な量だけつくって提供できるものがいいなと考えたんです。カフェを開くとか、パティシエで独立するとか、食の世界で多くの選択肢がある中で、「やりたいこと」と「やれること」をすり合わせて、「自宅で予約制のお菓子教室を開くこと」という夢を思い描くようになりました。

しかし、トントン拍子に教室を開いたわけではありません。妊娠を機にしばらくはバイトから遠ざかっていたのですが、その間に生まれた子どもにアレルギーがあることがわかり、これまでの卵やバター、白砂糖を大量に使うお菓子から、使わないレシピに切り替える必要が出てきたんです。そこで、今までのレシピを参考にして、卵や乳製品などを植物性材料に変えて、アレルギーを持つ子どもでも安心して食べられるお菓子の試作を繰り返しました。

米粉やオーツ麦を使ったクッキーや、小麦、卵、乳製品フリーのケーキ、それらのレシピが固まってくると、同じアレルギーを持つ子どものママ友から、レシピを教えて欲しいという要望が増え、サークルのようにお菓子教室を開始しました。完全に独立して、採算も考慮した自宅のキッチンを『麒麟カフェ』として教室にしたのは、それから6年後の40歳のときでした。

子どもの小さな成功体験を身近で見られる幸せ

自宅で予約制のお菓子教室を始めて3年が経ちました。多くのお店でバイトをしてきたことが土台になっているなと感じることもたくさんあります。接客で学んだコミュニケーション能力や、パティシエとしての技術的なものまで。とくに卵や乳製品を使わなくてもつくれるケーキのデコレーションの技術は、ほかの教室との差別化にもつながっています。

『麒麟カフェ』では、親子で参加するお菓子教室も開催しているのですが、お菓子をつくる子どもたちの反応は、とても新鮮です。自分でお菓子をつくり上げる「成功体験」を身近で見守ることができるのも、大きなやりがいになっています。「自分の力で完成できた」と子どもたちの目がキラキラ輝いている表情は、ずっと見ていられますよ。

ときには、メールでお返事をいただくことも。家族の写真つきで感謝のお礼が届いたり、美味しかったという言葉をいただけたりするのは、本当に嬉しくて、毎回やっていてよかったなと心から思います。

将来はレシピ本にまとめるのが新たな夢

今後は誕生日や記念日など特別な日に、オリジナルのホールケーキをつくって持ち帰っていただく「アニバーサリー教室」をメインに活動していきたいと考えています。マンツーマンで行うので、小麦や卵を使わないケーキや、アレルギーの材料を抜いたものなど、細かい要望に応えることができます。

アレルギーを持つ子どもや、年齢を重ねて体質の変化で食べられないものが出てくるかたも多くいます。そういうかたの希望を聞いて、じっくり向き合える教室にしていきたいですね。そして、誰もが美味しく食べられるお菓子のレシピを、アレルギーを持つ子どもがいる家庭でも簡単につくれるように、将来的にレシピ本を出せたらいいなと、新たなる夢を膨らませています。