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田中 圭メイン写真

「いい役者」。この呼び方がぴったりくる若い俳優はどれだけいるのだろう。今回はそんな数少ない貴重な?若くて“いい役者”がアルバイトを語る。役に立たないことなんて、何もなかった、アルバイトの日々——。

バイトがあったから 〜“お先まっくら”な日々に耐える力〜

田中 圭

 「アルバイトはたくさんやりましたねー。カラオケボックスからお寿司屋、あとはいろいろエトセトラ。つい2年くらい前まで、仕事が入らないときはアルバイトをしていました。

 初めてアルバイトをするために面接を受けたのは高校に入学したてのころです。中学生はアルバイトができないけど、高校ではできるじゃないですか。だから“やったー! バイトできるー!”って喜んで近くのカラオケボックスに行ったんです。でも16歳じゃないとアルバイトで雇えないって言われてしまって、怒りましたよ。僕の誕生日は7月です。たった2、3カ月後には16歳になるのに、その2、3カ月にどれだけの差があるんだと。許せない!ってくらい(笑)。結局16歳になってからアルバイトを始めましたけど、とにかくそれくらいアルバイトがしたかったんです。

 なぜアルバイトがしたかったんでしょうね。そんなに物欲はないし、お金がほしいわけでもない。ただ働きたいだけだったんですよ。
 当時は今の仕事がいつでもあるわけじゃなくて、オーディションを受けて採用されれば仕事をもらい、その合間でアルバイトをしていました。もちろん、オーディションと仕事、アルバイトがうまく回るとは限らなかったんですけどね。

田中 圭 アルバイトしていても、よりによって週1回のアルバイトの日にオーディションが入ったり、オーディションに通ったら通ったでロケや撮影でアルバイトに行けなくなって、“辞めよう”ってなるし。ひどいときは、お店のオープニングスタッフのアルバイトに行ったはいいけど、2週間の研修に行っている間にドラマが決まってしまって、研修だけで“お疲れさまでした!”って終了(笑)。仕事が終わると“ヤバイ、バイトしなきゃ”とは思うものの、またすぐ次の仕事が決まると同じことの繰り返しになっちゃうじゃないですか。だからしばらくアルバイトをしないでいると、今度は仕事が決まらない。じゃあアルバイトしなくちゃって思って始めるといい仕事が決まる(笑)。だから、長期のアルバイトはお寿司屋さんでやった1年が一番長いですね。大将がいい人で、オーディションを受けたり、仕事が決まったときにはアルバイトを休んでもいいって言ってくれました。でも最後は『すまん、人手が足りない。もう無理だ』って言われて辞めることになり、相当落ち込みました。でもその2日くらい後に、ドラマのレギュラーが決まって立ち直りましたけどね(笑)。

 あのころはいつでも仕事があったわけじゃなくて、先が見えない日々でした。そういうときにやることがないと、どんどん不安になっちゃうんです。だからアルバイトだったのかもしれません。アルバイトをしていると、それが本当に自分がやりたいことじゃなかったとしても一生懸命にやれる。そういうものがあるだけで、前に進む元気になると思うんですよね。不思議とアルバイトを始めると、オーディションに合格してしまうのも、そんな元気のおかげだったのかもしれません」

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プロフィール

たなか・けい


 1984年生まれ。2000年俳優デビュー。ドラマ『ウォーターボーイズ』で脚光を浴び、以降数々のドラマ・映画作品に出演。「憑依系の俳優じゃない、客観的な自分がいる」というが、無理のないナチュラルな演技が魅力のひとつ。昨年12月、岩松了作・演出の『死ぬまでの短い時間』で初舞台を踏み、演技・活動の幅を広げている。

インフォメーション

主演作・映画『凍える鏡』 1月26日公開

 明るい好青年を演じることの多い田中が、今までとはうって変わった役を演じる映画『凍える鏡』が1月26日公開。

 都会でひっそりと描いた絵を売る瞬(田中)は、ある日ふとしたきっかけで、田舎で暮らす童話作家・香澄(渡辺美佐子)に出会う。瞬は幼いころ母親から受けた虐待のために心に傷を負っていた。瞬との交流の中でそれを知った香澄は、臨床心理士の娘・由里子に治療を依頼する。しかし、由里子もまた瞬と同じように母親に満たされない思いを抱く一人。好意を寄せながらも、ささいなことがきっかけで由里子の治療から逃げ出した瞬は、香澄とともに雪深い信州の山里で暮らすようになる。そこに、由里子が現れ、3人の心が暗い闇の奥で揺れ始める…。

 「どんな現場でも毎回毎回がターニングポイント。何かを学んで、少しでも結果を出して次につなげていきたい」と語る田中が今回挑んだのは、心に闇を抱える青年。少人数のチームで、長野県の山奥で行われた撮影も、演技を磨く肥やしになったようだ。「演技はいつだって“まだまだ”と思うんです。試写を見ても恥ずかしい。でも、今回の監督とのやりとりは、今までやってきた演技のやり方と違っていて勉強になりました。瞬の心の葛藤と、親と子の再生の物語をぜひ見てみてください」

1月26日よりシネマ・アンジェリカにて
ロードショー 出演:田中 圭、冨樫 真、
渡辺美佐子 監督・脚本・編集:大嶋 拓  2007年/日本/カラー/100分/HD
HP:http://www.kogoeru.net/
製作・配給:「凍える鏡」製作事務所

撮影:三橋令嗣

取材協力:TOKYO HEADLINE

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