連載コラム(全4回)

監督とよばれるシゴト― 映画監督・山崎貴

映画監督・山崎貴さんに、最新作『海賊とよばれた男』の撮影裏話とともに監督自身のシゴト観についてたっぷりうかがいました!

撮影/宅間國博
第4回

チームのバランスが、成功のカギ

自分の「影」を見せてくれる存在

映画をつくるときは、ヒットさせるためにさまざまな方法を考えます。どんなチームで制作するかも、とても大切です。最適な技術を持ったスタッフを選ぶことはもちろん、魅力的な役者さんを集められることも大切。前回「イエスマンを身近におかない」という話をしましたが、それに似た話で、もうひとつこだわっていることがあります。
それは、名づけて「ネガティブ・プロデューサー」を連れてくることです。

『海賊とよばれた男』にも、そういう存在がいます。『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズはもとより、ボクのヒットした作品にはほとんど参加してもらっています。逆にいえば、その人がいないとヒットしないといってもいい。

ネガティブ・プロデューサーがどんなことをするかというと、とにかく僕のつくったシーンに、結構文句を言ってくる(笑)ボクが満足していても、どこかしら不満足な点を見つけて、直すようにと言ってくる。元来、陽気で褒められるのが大好きな僕にとっては、本当にストレス!でも、彼は欠かせない存在なのです。

僕は映画『スター・ウォーズ』シリーズが大好きです。名作だと思うのは「エピソード4」と「エピソード5」。「エピソード6」以降はあまり好きではありません。ジョージ・ルーカスの代表作ですが、実はこの作品にもネガティブ・プロデューサーがいるんです。それも「エピソード4」と「エピソード5」だけ。彼の名前は、ゲイリー・カーツ。僕と同じように陽気で「こんなのがつくれたよ~」と自慢したがるような性格(だと思う)ルーカスに対して、ゲイリーは正反対。とにかくネガティブな性格なんじゃないでしょうか。その2人が意見を出し合ってつくったからこそ、「エピソード4」「エピソード5」は、明るいシーンからダークサイドまで、きっちり素晴らしくつくり込まれている。それが、ゲイリー・カーツがはずれた「エピソード6」では、イウォークなんて出しちゃって……なんか求めている物と違うというか……。そのせいで物語が能天気すぎてはいないか……?という感じに思えてしまうんです。

頭を下げてもシゴトをしたい、苦手な人

ボクにとっても、ネガティブ・プロデューサーがいないと、作品が薄っぺらくなってしまうかもしれない。複雑な視点や、深い意味を持たせてくれる存在がいるからこそ、作品に厚みが出るんです。だから毎回、微妙に抵抗があるんですけど(笑)、頭を下げて「参加してください!」と頼みにに行くのです。『海賊――』でも、是非にとお願いしました。おかげで、社会的で思いテーマの物語でありながら、老若男女、どなたでも楽しんでもらえるエンターテインメント映画に仕上がったと思っています。

実は、ルーカスだけ、ゲイリーだけの映画もあります。ゲイリーだけの映画って、本当に暗い作品なんです。彼らのバランスが非常に釣り合っていた結果が、傑作を生んだ。そのことを知っているからこそ、バランスがとれたチームを組んで、いい作品を作りたいと思っています。

でもコレって、シゴトはみんな同じですね。一人でできることって少ない。みんなで補い合い、力を合わせて、全員が「このシゴトをいいものにしたい」と頑張って、初めて、素晴らしいシゴトになっていく。バイトも同じですよ。そういう意味では『海賊――』の主人公、国岡鐡造は理想の人かもしれません。ぜひ彼の「生き様」を感じて、いいシゴトができるヒントをつかんでください。

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