渡辺大知

Daichi Watanabe
アーティスト

バンドという帰る場所があるから、 役者っていう孤独な作業も 楽しむことができています

ロックバンド『黒猫チェルシー』のボーカル、渡辺大知が『an』に初登場。2015年NHK連続テレビ小説『まれ』で、口数は少ないが独特な雰囲気を醸し出す二木高志役で、彼の存在を知った人は多いかもしれない。劇中、無口な高志が初めて発した声は、バンドで培ってきた「歌声」だった。普通っぽいたたずまいからは想像できないほどの、驚異的な爆発力をもつ。天性の表現者、渡辺大知。

音を奏でるだけが
バンドじゃない

僕がボーカルを務めるバンド・黒猫チェルシーの新曲『青のララバイ』が、アニメ『NARUTO-ナルト-疾風伝』のエンディング曲として流れています。日本はもちろん、海外でも大人気のアニメ『NARUTO――』と僕らの曲がコラボレーションすることが決まったときには、光栄であるとともに、どんな化学反応が起きるのか楽しみな気持ちでいっぱいでした。実際に放送を見てみると『NARUTO――』の世界観と、僕らがやりたい音楽がうまく調和している印象を受けました。これを機に、普段はロックを聴かないという人にも、新しい興味につながっていってもらえたらうれしいです。『青のララバイ』では、自分たちが出演するミュージックビデオ(MV)の撮影もしました。バンドっていうのは、音を鳴らすだけではなくて、いろんなものを詰め込める「おもしろいモノ」だと思っています。だから、絵でも写真でも、興味を持ったモノや好きなことを、全部バンドの中にぶち込んでいきたい。その好きなモノのひとつが、演劇です。音楽になっている時点で、自分には見えている風景があります。『青のララバイ』は、夜、街にはたくさん人がいるんだけど、ひとりぼっちで歩いているような、切ない気持ちを持っているくせに、ちょっとカッコつけて歩いているような……。悲しいことがあったけど、悲しさを出さないで歩いている――そんなイメージを持って歌っています。MVは、それとはまた別の次元でつくっているもので、好きな演劇を音楽の中に遊び感覚で加えさせてもらっています。音楽と映像が重なることで、より曲の景色を感じてもらえたら、いいかな。

役者を辞めようか……
メンバーに背中を押された

NHK連続テレビ小説『まれ』に、ヒロインのおさななじみの1人の二木高志役で出演しました。実はその1年ほど前、役者のシゴトを続けるかどうか悩んだ時期があります。情熱はあるんだけど、なかなかシゴトに繋がらないというのが理由のひとつ。そして、僕の心の中の問題だったのですが、役者をやっていることで、バンドのメンバーに勝手に気を使い始めちゃったんですよね。役者の活動をメンバーはどう感じているんだろう。なんだかモヤモヤする日々に嫌気がさして、もう役者を辞めようと決意しました。そのことをメンバーに打ち明けると「俺らのことを気にして、自分の可能性をつぶすなんてもったいない」「バンドのせいにしないで、しっかりやってほしい」。そして「役者のシゴトは向いているよ」という言葉をもらいました。確かに「バンドだけに絞れ」なんて、誰からも言われていないのに、いったい何を気にしていたんだろう……、気持ちがスッとして、頭がクリアになっていきました。僕は昔から、好きなことに没頭して、自分らしく生きている人をすごくカッコいいなって思っています。自分もそうでいたい。そんな初心にも立ち返り、迷いがいっさいなくなりました。『まれ』劇中には「黒猫チェルシー」が「little voice(リトルヴォイス)」というバンド名で出演しました。音楽と演技を見てもらうことができた『まれ』への出演、今までやってきたことがすべてつながったような、一種の手応えのようなものを感じられる経験でした。

孤独な作業も
バンドがあるから、できる

今、シゴトをする上で一番大事にしていることは、「楽しむこと」です。一言で語るのはとても難しいですが、バンドと役者はまったく別のおもしろさを感じています。バンドは、僕ら「黒猫チェルシー」4人の人間がいろんな感情を持ちながら、ひとつの音を出しています。ナマモノのように日々生きて、変化していくんです。そこには、発見やワクワク、ときには不安など、新しいことが湧き出ています。目まぐるしいほどの変化があって、毎日刺激的です。一方、役者というのはひたすらに、自分に向き合うことが大切な作業だと思います。作品ごとに違う現場で、違う人に出会い、別の人間を演じる。そういう場所で、見る人が感動する瞬間をつくっていくというのは、とんでもなく孤独な行為です。僕はずるい、のかもしれないです。バンドという「家」があるから、役者を続けているという部分は大きいです。たぶん役者1本はムリ(笑)バンドという帰る場所があるから、役者の孤独をも楽しむことができています。

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