アルバイトの社会保険はどうすればいいの? 社会保険労務士が徹底アドバイス!

社会保険には、労災保険・雇用保険・健康保険・介護保険・厚生年金保険の5つの区分があり、2016年10月から社会保険の加入対象者の範囲が拡大しています。条件を満たせば、アルバイト・パートにも加入義務が発生するのですが、加入条件が保険ごとに異なるため「誰を加入させるべきなのか」に悩まれている方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、人事労務コンサルタント・社会保険労務士で「日本橋人事労務総研 社会保険労務士小岩事務所」代表の小岩和男さんに、アルバイトに関する保険についてお話をうかがいました。

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アルバイト雇用に必要な保険を知る

――アルバイトと聞くと、保険はあまり関係ないイメージがあるのですが、アルバイトやパートなどの非正規雇用の人にも加入が必要な保険があるのですか?

もちろんです。所定条件を満たせば社会保険も労働保険も加入しなければなりません。アルバイトを採用した時点とアルバイトが辞める時点は手続きもありますので、保険制度を細かく知るのは難しいでしょうが、ポイントだけは押さえておくべきだと思います。

誰でも簡単に情報にアクセスできる時代なので、じつはアルバイトの方も福利厚生についての知識をある程度持っています。アルバイトの方に「福利厚生はどうなっていますか?」と聞かれて答えに詰まる…というのでは、雇う側の意識が低いと見られても仕方ありません。「実際に給料を振り込むのも、福利厚生についてケアするのも本社」という大手チェーン店でも、アルバイトに接しているのは現場の方。保険について整理して提示しておくことでトラブルも回避でるので、自らきちんと説明ができるだけの知識は持っておきたいものです。

――では、具体的にアルバイトの方が加入する保険について教えてください。

アルバイトの方でも加入しなければならない公的な保険のメニューは5つあります。

≪図1≫必要な保険の種類

介護保険は40歳以上が対象で、健康保険と一緒に保険料が徴収されるためにカテゴリーとしては健康保険の一部と考えてもいいのですが、ここではあえて分けておきましょう。一般的には「アルバイト」というと若い方のイメージがあるかと思いますが、実際には50代もいれば60代のシニア世代も活躍していますからね。

図1下段の、5つの区分全てが「社会保険」となりますが、中でも「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」の3つを合わせたものを(狭い意味での)「社会保険」と呼びます。一方、労災保険と雇用保険を「労働保険」と呼んでいます。社会保険からみてみましょう。

●健康保険

怪我や病気、出産等の際に給付を受けられる保険。病院で患者が支払う自己負担額が安いのは、この制度があるからなんです。

●介護保険

介護保険は介護が必要になった際に給付される保険。先ほどお伝えしたように、40歳以上になると保険料を徴収されます。

●厚生年金保険

厚生年金保険は、国民年金に上乗せされて給付される年金のこと。基礎年金となる国民年金の金額に厚生年金保険の受給額が加算されて支給されます。

これら社会保険は、条件が合致した場合はアルバイトやパートであっても適用の対象となります。加入すべき従業員を非加入のままにしていると従業員側に不利益が生じるため、採用時に適正な手続きをする必要があります。また、上記3保険の保険料は、本人と会社の折半負担となっています。

アルバイトの保険適用条件とは?

――「条件によって」とおっしゃいましたが、その条件には、どういうものがあるでしょうか。

社会保険の場合、労働時間や労働日数がどうなっているかによります。アルバイトやパート従業員などであっても、常用的な雇用関係があれば加入しなければなりません。現在の判断基準は以下の通りです。

■1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が常時雇用者の「4分の3以上」の場合
■労働日数と労働時間が「4分の3未満」であっても、以下の(1)~(5)すべてに該当する場合
(1)1週間の所定労働時間が20時間以上あること
(2)賃金月額が88,000円以上であること
(3)勤務期間が1年以上見込まれること
(4)学生でないこと
(5)被保険者数501人以上の企業の従業員
(被保険者数500人以下の企業の従業員の場合には、加入について労使合意が取れた場合)

ここで重要なのは、従業員の希望や会社の都合にかかわらず、条件が合致すれば加入しなければいけないということです。以前は、支払いが多くなるために企業側が保険に加入しない例もありましたが、近年は取締りが厳しくなってきています。もし未加入が発覚した場合、過去2年までさかのぼって保険料を請求されることもありますし、また大切な企業イメージの失墜にもつながりかねません。従業員の不利益になることを行うのは企業にとって大きなダメージとなり、結果として企業の不利益につながることをぜひ知っていただきたいですね。

――労災保険と雇用保険についてはいかがでしょうか。

●労災保険

労災保険は仕事や通勤中にケガや病気等をした際に給付されるものです。これは雇用形態に関係なく、従業員を採用した際には自動的に加入しなければなりません。原則、従業員を雇用する企業は労災保険の適用を受けることになっており、全従業員を加入させます。

●雇用保険

雇用保険は、失業した際に受け取れるほか、高齢(60歳以上)になって給料が下がった分や育児休業や介護休業で給料が出ない部分を保障するという役割もあります。これは労災保険と違い、
31日以上引き続き雇用されることが見込まれる
1週間の所定労働時間が20時間以上
という2つの条件で採用する場合に加入することになります。

福利厚生を整えることが、良質な人材確保につながる

――それでは、具体的に手続きをどうするかについて教えてください。

健康保険と介護保険、厚生年金の社会保険加入手続きは、原則として同時に行います。条件をクリアすれば、従業員が採用されてから5日以内に会社が年金事務所に資格取得届を提出。書式がセットになっているため、一連の手続きで社会保険すべての手続きが完了します。但し、自社企業が健康保険組合に加入している場合には、組合の手続きも加わります。

労災保険は従業員ごとに加入手続きをするわけではなく、企業単位で対応。毎年、企業が行う労働保険の申告・納付の手続きによって完了します。保険料は途中入社の従業員も含め、年度内すべての従業員の給与総額に対応した保険料を計算し、企業が負担します。従業員からの保険料の徴収はありません。

雇用保険の加入手続きは、所轄のハローワーク(公共職業安定所)で行います。「雇用保険被保険者資格取得届」を従業員の採用月の翌月10日までにハローワークに提出します。雇用保険の保険料の従業員負担分は、従業員の賃金総額に所定率を掛けて計算し、給与を支払うごとに徴収することになります。これを1年分徴収しておき、毎年1回の労働保険の申告・納付の時期に企業側負担分を併せて納める必要があります。

――なるほど。社会保険は年金事務所で一括手続き。労働保険の窓口は、労災保険が労働基準監督署、雇用保険がハローワークですね。なかなか大変なことだと思いますが。

確かに、手続きを細かくみていくと複雑だと思われるでしょう。現場の店長さんなどが行うことはまれでしょうが、従業員が安心・安全に働くことができるための福利厚生が、どういう仕組みになっているのかはぜひ知っていただきたいですね。

もしご自身がこうした手続きをやらなければいけない立場で、「自信がない」という場合は、もちろん社労士などのプロに相談したり、手続きを任せることもできます。ですから、まずはご自身や会社が保険に対する意識を高めていくこと。そこからすべてが始まりますよ。

人を雇うということは、従業員の福利厚生を充実させる責任が伴うものです。現行の法律の状況や世の中のトレンドをつかんだうえで、雇う際や辞める際のルールというものをきちっと整理しておかねばなりません。アルバイトやパート側の会社を見る目もシビアになってきていますから、福利厚生をいい加減にしている企業は、人手不足の中で良い人材を採用することも難しいでしょう。

まとめ

アルバイトでも加入させなければならない公的な保険のメニューは「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」「労災保険」「雇用保険」の5つ。

アルバイトであっても、1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が常時雇用者の「4分の3以上」であれば社会保険に加入しなければなりません。もし労働日数と労働時間が「4分の3未満」であっても、一定の条件をすべて満たす従業員は被保険者となります。

労災保険は雇用形態に関係なく、従業員を採用した際には自動的に加入。雇用保険は、「31日以上引き続き雇用されることが見込まれる場合」「1週間の所定労働時間が20時間以上の場合」という条件で採用される場合に加入します。

社会保険の手続きは年金事務所で行い、労災保険は労働基準監督署で、そして雇用保険はハローワークでそれぞれ行います。少し複雑ではありますが、会社の信用にもつながる大切な手続きなので、ぜひこの機会に会社内で話し合い、必要でしたら社労士に一度相談してみてはいかがでしょうか。

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