平成30年、配偶者控除の適用条件が変更に。これを機に「○○万円の壁」をまとめて理解しよう。

税制改正により、平成30年から配偶者控除および配偶者特別控除の適用条件が変更されました。これは一般的に「103万円の壁」などとと呼ばれていたものです。読者の方の中にも、この「壁」を越えたくないアルバイトの主婦(夫)さんが11月や12月になかなかシフトに入ってくれなくなって困った、という経験がある方もいらっしゃると思います。

『短時間労働者の多様な実態に関する調査(平成24年12月)』(※)によると、「○○万円の壁」を意識して就労調整している割合は34.5%と、決して無視できる数字ではありません。しかし、内容が複雑で何がどうなっているのか分からない……今回はそんな人事担当者の方に向けて、配偶者控除を含む3つの「壁」についてご紹介しつつ、主婦(夫)に対してどうアプローチすればいいかをまとめます。

 

結局なにがどうなるの?配偶者控除の変更点を解説

※ 以下、an report読者にとって一番関わる頻度が多いであろう、世帯主が会社員又は公務員、かつ主婦(夫)がパートタイマーの場合について説明します。

これまでの配偶者控除では、年収が103万円を超えると控除が減額されていくので、主婦(夫)の就労を抑制する原因になっていると指摘されていました。しかし、今回の改正では減額が開始される金額が下図(※)のように後ろ倒しになります。これにより、控除が年収103万円を超えると減少していくことを懸念して就労を抑制していた主婦(夫)は、よりたくさん働けるようになったと言えるでしょう。

従来は、主婦(夫)の年収が103万円になるまでは配偶者控除が適用されて税金上優遇を受けることができ、103万円を越すと年収の上昇とともにその優遇幅が減少していきました(103万円の壁)。それが今回の改正では、優遇幅が減少し始める年収は150万円にまで後ろ倒され、150万円を越すまでは配偶者控除を受けることができるようになったのです。

ただし注意すべきなのは、配偶者控除の適用要件に世帯主の年収が加わったことです。まず、世帯主の年収が1,120万円~1,220万円の場合は、世帯主の年収が~1,120万円の場合と比べて控除額が減少します。また、世帯主の年収が1,220万円~の場合は、そもそも配偶者控除が適用されなくなります。すなはち、配偶者控除を一番気にするのは、世帯主の年収が~1,120万円の場合ということになります。

✓配偶者控除が適用されなくなる配偶者の年収が103万円から150万円に後ろ倒された
✓世帯主の年収が1,120万円を超えると控除額が減少し、1,220万円を超えると控除が適用されなくなった

 

いくつもある「○○万円の壁」。着目すべきはどれ?

主婦(夫)が就労に二の足を踏んでしまう「○○万円の壁」はこれだけではありません。平成30年以降の「○○万円の壁」がどのようになっているのか理解するため、下記の図を見てみましょう。

大きく見ると、「○○万円の壁」はこれだけ存在します。ただし、その全てが主婦(夫)の就労に大きく影響しているという訳ではありません。住民税や所得税は金額としてはさほど大きくないため、あまり意識していない主婦(夫)の方が多いのが現状です。家計に与える影響度の大きさから考えて、ここで押さえておくべきは「配偶者手当」「社会保険」「配偶者控除」の3つでしょう。

「配偶者手当」は、世帯主の勤め先からもらえる手当で、勤め先によっては月に数千円から数万円の手当を貰えます。多くの企業は、以前の配偶者控除の条件に合わせて、配偶者の年収が103万円以下であることを支給条件にしていました。しかし実際には企業によって基準は異なっており、そもそも配偶者手当を導入していなかったり、改正を機に制度を廃止した企業もあるので、雇用している主婦(夫)さんに直接確認する必要があるでしょう。

「社会保険」は、年収が130万円、もしくは一定の要件を満たす場合(※)は106万円を超えると、健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料が差し引かれるようになります。もちろん、社会保険に加入すれば将来受け取る年金の額が上乗せされるなどメリットはあるのですが、130万円に到達した瞬間に相当の金額が差し引かれるため、130万円~150万円ほどまでは年収が増えても手取りが目減りします。これを避ける主婦(夫)の方が多いため、「壁」として意識されるようになりました。

「配偶者控除」も、主婦(夫)に意識されることの多い「壁」です。先の『短時間労働者の多様な実態に関する調査(平成24年12月)』では、配偶者控除の適用を受けるために就業調整をしていると回答した割合は42.4%でした。年収が150万円を超えると配偶者控除の適用外となります。代わりに適用される配偶者特別控除も、年収が増えることに控除額が減っていき、年収が201万円になると控除額がゼロとなります。年収150万円というとかなりの額なイメージですが、最低賃金引き上げで平均時給が高騰している昨今、時給1,000円で1日7時間、月20 日働けば超えてしまう数字です。

 

主婦(夫)に活躍してもらうためにするべきこと

まずは、これらの「○○万円の壁」について、採用担当者がしっかりと理解をすることが先決です。誤った理解のもとでシフト調整を行っていると、まだまだシフトインできたはずの主婦(夫)のシフトを抑えてしまったり、逆にうっかり主婦(夫)の希望に反して「壁」を越えさせてしまうことに繋がります。

そして、正しい知識をアルバイトの主婦(夫)さんにもきちんと説明して理解してもらったうえで、主婦(夫)さんがどんな「壁」を目の前にしていて、今年はいくらまで稼ぎたいのかヒアリングするとよいのではないでしょうか。先に情報を得ておけば、○○さんは今月は何時間、○○さんは何時間などと毎月のシフト計画を立てやすくなり、年末に慌てることもなくなるでしょう。

 

まとめ

いかがだったでしょうか?今回改正された配偶者控除を含む「○○万円の壁」を理解するのは簡単ではありませんが、主婦の応募が伸び始める3月を前にしたこの時期に職場の全体像をしっかりと把握し、もしも人員が足りないようであれば新たに人を採用して早めに盤石の態勢を整えておくことが大切です。

①配偶者控除は適用範囲の年収が後ろ倒しになった
(改正前)103~141万円
(改正後)150~201万円
世帯主の年収に制限が加えられた
(改正前)世帯主の年収制限なし
(改正後)1,120万円を超えると控除額が減少、1,220万円を超えると控除なし

②押さえておくべき「○○万円の壁」は以下3つ
◆103万円・・・「配偶者手当」世帯主の勤め先からもらえる手当。年収103万円を限度にしていることが多い。
◆130万円(106万円)・・・「社会保険」健康保険や厚生年金保険に加入するため、この年収を超えると手取りが一気に減少する。
◆150万円・・・「配偶者控除」配偶者を養う世帯主の税金が軽減される。年収150万円を超えると軽減額が減少し、201万円でゼロになる。世帯主の年収により額が変わる。

明日からの採用活動に少しでも役立てば幸いです。

 

※ 労働政策研究・研修機構「「短時間労働者の多様な実態に関する調査」結果」労働政策研究・研修機構
http://www.jil.go.jp/press/documents/20121226.pdf

※ 図は財務省HPより抜粋
http://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei17/01.htm#a01

※ 年収106万円以上で社会保険料自己負担となる要件
・週20時間以上勤務している
・1年以上の勤務期間がある
・従業員501人以上の企業
・月額88,000円以上の給与

 

メールマガジンにご登録いただくと記事の更新をタイムリーに受け取ることができます。ご登録はこちらからどうぞ
「anレポート」に掲載されている記事・図表の著作権は、全てパーソルキャリア株式会社または正当な権利を有した第三者に帰属しています。
当該著作物を利用する場合には、出所の記載をお願いします。
また、編集・加工等をして利用する場合には、上記出所に加え、編集・加工等を行ったことをご記載ください。
WEBサイトに掲載される場合はこちらからお問い合わせください

ページトップへ

ページの先頭へ