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年上のベテランバイト・パート従業員を管理する10のポイント

 スーパーやコンビニエンスストアといった小売業を中心に、退職後(定年退職含む)のシニア層が、アルバイト・パートとして勤務するケースが増えています。また、20年、30年と長く勤務するベテランのアルバイト・パートも年々増加しています。2013年4月1日から施行される改正高年齢者雇用安定法などを背景に、こうしたシニア層の勤務者は今後ますます増えていくと考えられます。
 その一方で、店長などの管理職については若返りを図る企業が多く、年長のアルバイト・パートをいかにマネジメントしていくかを悩んでいる若い店長も多いようです。
 そこで今回は、年長やベテランのアルバイト・パートのマネジメントについて、人材育成コンサルタントの石川和夫さんにアドバイスしていただきました。


~年上の部下への対応に悩む管理職が増えている~

人材育成コンサルタント 中小企業診断士 ARKコンサルティング・オフィス代表 石川和夫
 私はコンサルタントになる前、セブン‐イレブン・ジャパンで店長、スーパーバイザーを経験し、同社退職後はしばらくコンビニエンスストア3店とイタリアンレストラン2店の経営に携わっていました。

 スーパーバイザーをしていた時には、8つの加盟店を担当していたのですが、当時20代だった私からすれば、父親ぐらいの年齢のオーナーに対して、いかに本部の施策を伝え、実行してもらうかは本当に難しい課題でした。また、コンビニやレストラン経営では、なかなか思うようにアルバイト・パートを動かすことができず、売上も伸びなくて大変苦しんだ時代もありました。

 こうした課題を乗り越えてきた経験とその後修得したコーチングのスキルを踏まえ、現在は、スーパーやコンビニなど小売業を中心に数多くの企業の人材育成に関するコンサルティングに携わっています。

 最近、私の周囲でも、年上の部下にどう対応していいのかわからないと悩んでいる若手管理職が非常に増えています。

 そこで今回は、どうすれば円滑にマネジメントできるのかについて、10のポイントにまとめました。どれもすぐに活用できることばかりです。ぜひ実践してみてください。職場が変わりますよ。

年長アルバイト・パートをマネジメントするための10のポイント

1. 年上・年下を気にしない。役職・役割を意識する
 仕事で優先されるべきは、年齢ではなく、役職・役割です。
 あなたのほうが従業員よりも年下だろうが、店長、マネージャーという役割を与えられているのであれば、まずはその職務に徹し、責任を全うすることを優先してください。それがプロというものです。
 「アルバイトとはいえ、相手のほうが年上だし……」と遠慮する気持ちがあると、相手も遠慮してしまいます。コミュニケーション上の伝わる割合を示した「メラビアンの法則」にあるように、言葉よりも「声の調子」「態度」「表情」に気持ちが表れてしまい、それが相手に伝わってしまうのです。
 ですから、まずは役職に徹するという心構えを自分自身でしっかり持ってください。
2. 年長者であることに対して敬意を払う
 あくまで役職・役割は、会社から与えられた業務上のもの。店長だからといって、決して相手より「偉い」ということではありません。1のポイントと矛盾するように思われるかもしれませんが、役割では年齢は関係ありません。しかし、一人の人としては人生の先輩であり、敬意を払うべき存在です。だから、何かをお願いする際も、「自分は店長という役割を全うしたい。だからぜひ協力してほしい」という謙虚な姿勢が大切です。
 敬う気持ちがないと、やはりそれも表情や態度に出てしまい、年長アルバイト・パートのやる気を引き出すことは難しくなります。
3. 言葉はもちろん敬語で。感謝の気持ちを伝えることも忘れずに
 年上の人に何かをお願いする際は、きちんと敬語を使って話す。これは当たり前のことですね。名前も「~さん」づけが基本です。
 そして、実際にやってもらったら「ありがとうございました」と感謝の気持ちを伝えます。
 昔、私がセブン‐イレブンでスーパーバイザーをしていた時、こちらが本部だという意識があるせいか、つい加盟店のオーナーに偉そうな口調で話してしまうことが何度かありました。本部だから偉いということは決してないのに、施策を伝える側だと、なぜか勘違いしてしまうんですね。
 先ほども言いましたが、店長だからといって決して偉いわけではありません。特にお客さんの前では、スタッフに対して敬語を使うようにしましょう。お店の印象も良くなります。
4. 勤続年数の長いアルバイト・パートこそ仕事ぶりを見る
 入って間もないアルバイト・パートに対しては、現場に慣れてきたかどうか、ちゃんと接客しているかどうかが気になるため、つい目が行きます。成長段階にあるため、良いところも見つけやすく「短期間でよくここまで覚えたね」などと褒める機会も自然に多くなります。
 ところが、勤続年数が長いアルバイト・パートの場合、「どんな業務もできて当たり前」になってしまい、放っておかれることも多くなります。その結果、不満やストレスがたまりがちです。
 新しい人たちだけでなく、勤続年数の長いアルバイト・パートの仕事ぶりもしっかり観察し、何か気づいたことがあれば、ぜひ声掛けをするようにしてみましょう。たったそれだけで彼ら彼女たちのモチベーションもアップします。また、何かくすぶっている感じがしたら、時間をとって話を聞き、抱えている不満などをすべて吐き出させてあげましょう。
5. 「褒める」よりも「認める」が大事
 ただし、年長者に声掛けをする際、気をつけたいことがあります。
 勤続年数の長い年長アルバイト・パートを褒めてあげてもちろんいいのですが、意外に「褒める」というのは難しいもの。以前、管理職者を集めたセミナーで「女性スタッフの何を褒めますか?」と聞いたところ、「どこを褒めていいのかわからない」人が大半で、少数の人が「容姿か服装」と答えた程度でした。でも、それでは相手の受け取り方次第でセクハラにもなりかねません。また、その他のことを褒めるにしても、言い方次第では、上から目線になってしまうこともよくあります。

 ですから、私はいつも「褒めようなんて思わなくていいです。その代わり相手の行動を観察し、認めてあげましょう」と言っています。

 例えば、お願いしてあった業務をやってくれたら「よくできましたね」ではなく、「やってくれたんですね、ありがとうございます」と言う。休憩中にマニュアルを読んで勉強していたら、「偉いですねえ、感心ですね」などと褒めるよりも、「マニュアルを読んでくれているんですね」でいいんです。

 働きぶりや行動を観察し、小さな変化を見てあげて、そのことをそのまま認めてあげることが大切です。そうすることで、「店長は、忙しいのに私のことを気にかけてくれている」とアルバイト・パートさんも感じてくれるでしょう。
6. 元上司が部下になった場合は「相談する」がベター
 年上の元上司が定年退職し、アルバイト・パートとして自分のもとで働くことになることもあります。その人に対しては、「相談する」が一番良いコミュニケーション術になります。
 経験、知識、能力すべてを持っている人に対して、今さら「認める」というのも失礼な話。それより、あくまで先輩として相談してみる。そうすると、それが相手を認めていることになり、いろいろ話してくれるはずです。
7. 褒め言葉を使うなら、相手のタイプに合わせて褒め方を変える
 一人ひとりの特性や行動パターンを把握し、その人が喜ぶ褒め言葉を投げかける。これもコミュニケーションを円滑にする方法の一つです。仕事志向度や人間関係の重視度などを元にすると、人の行動傾向は4つの代表的なタイプに分かれ、それぞれに合う対応方法は異なります。
図表:4つの「行動パターン」の傾向分類 例えば、成果重視型で仕事への取りかかりが早い人に対しては、本人を褒めても意に介しません。それよりは、「●●さんの売場のアルバイトは仕事が早いですね」など、例えばその人がまとめている売り場のスタッフを褒めるなど、間接的に伝える方が効果があります。
 また、仕事への取りかかりが早く、人間関係を大事にする社交重視型の人は、逆に何を言ってもOK。できる限りこまめに褒めることでやる気をどんどん引き出せます。
 仕事はゆっくりと慎重で、人間関係を重視する人は協力関係重視型です。結果だけでなく小さな行動、プロセスを逐一褒めるようにしましょう。無意識のうちに感謝や評価を求めているため、そこが満たされないとモチベーションが低下してしまいます。
 仕事志向で内省的、ポーカーフェイスで感情がわかりづらい職人肌のような人はクオリティ重視型です。「ロス率が毎月0.5%ずつ改善していますね」と具体的に何がよかったのかを褒めてあげることが大切です。
8. 「要求」は「要望」に変えて伝える
 前述のように、相手が年上だからこそ、敬意を払う、声掛けをするといった「配慮」は必要ですが、「遠慮」をしてはいけません。特に、業務上で何か問題があったり、改善してほしいことがあれば、「遠慮」せずに言うようにしましょう。
 ただ、言い方に工夫が必要です。
 「要求」ではなく、「要望」に変えて言うのです。
 例えば、「あなたはベテランなんだから、しっかりやってもらわなくては困ります」と、相手に対して求める言い方は「要求」です。そういう言い方をされると相手は反発を感じます。
 そうではなく、主語を「私」にして、自分が「要望」していることを伝えるのです。
「ベテラン従業員として今の働き方でいいのでしょうか? 私はあなたにみんなの先輩として手本となるような働き方をしてほしいと思っているんです」と言われたらどうでしょう。このように、「私は、あなたにこういうことを求めているんですよ」という言い方が「要望」です。
 ポイントは「あなたは○○なんだから、こうしてください」ではなく、「私はあなたに、こうしてほしいと思っている」と自分を主語にして伝えること。相手にすっと思いが伝わりやすくなります。
9. 責任ある仕事を任せるなど居場所を作る
 年長アルバイト・パートの居場所を作ってあげることも大切です。例えば、その人だからこそお願いできることや立場以上のことを任せてみる。「新人の教育をお願いしたい」「アルバイトさんにはお願いしていないことだったんだけれど、経験もあることだし、ぜひシフト管理をお願いしたい」など、責任ある仕事をお願いすると他の従業員との違い(居場所)が明確になるため、仕事に対する姿勢も変わってきます。
 なおかつ、普通のアルバイト・パートの職域を超えた業務を任されていることが、誰から見てもわかるようにしてあげることも大切です。
10. 以上を踏まえた上で、自分が目指す職場像を伝える
 9までのプロセスを実践し、ある程度どのスタッフともコミュニケーションがとれてきたなと思ったら、自分が店長・管理職として、ここをどんな職場にしたいのか、どんな店にしていきたいのかを社員、アルバイト・パート全員に伝えます。それが全員の目標となり、職場の軸となっていきます。目標が明確であれば、スタッフも働きやすいもの。何より年長アルバイト・パートはこれまでの経験もあるので、その目標に照らし合わせ、自分が何をやるべきかを察知し、率先して活躍してくれるはずです。

まとめ

スタッフに対するリサーチも大切!

 人をマネジメントする立場にいると、つい説得しようとしたり、言いまかそうとしがちです。しかし、それでは相手の年齢に関係なく、スタッフは動いてくれません。
 職場の価値は、人材の多様性にあります。スタッフそれぞれの力が互いに作用し合うことによって、相乗効果を生み出し、さらに大きな成果を上げていくものです。

 ですから、まずは年長アルバイト、年長パートだからといって変に遠慮したり、警戒したりすることなく、彼らが何を求めてここで働こうと思ったのか、どんな価値観を持っているのかなど、一人ひとりについてリサーチを行ってみてはいかがでしょう。
相手を知ることで接点が見えてきます。接点が見つかれば、そこから彼らと一緒に何をすれば、より楽しく働ける職場になるか、考えていけばいいのです。

 実際、私の担当する顧客企業の中でも、上記1~10のことを実践し、年長アルバイト・パートとのコミュニケーションが活発になった小売店やスーパーでは、どんどん彼らからアイデアが提案されるようになり、店舗売上を確実にアップさせています。
 コミュニケーションがうまくいくと、数字が確実に変わります。
 ぜひ、みなさんも実践してみてください。

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人材育成コンサルタント 中小企業診断士/ARKコンサルティング・オフィス 石川和夫

石川和夫 / Kazuo Ishikawa

人材育成コンサルタント 中小企業診断士/ARKコンサルティング・オフィス代表 
 1958年栃木県生まれ。法政大学経済学部卒。(株)セブン‐イレブン・ジャパンにおいてスーパーバイザーとして7年間勤務。そののち、コンビニ3店とレストラン2店を12年間共同経営。
 現在は人材育成コンサルティング、コーチングを活用した管理職者向けコミュニケーション力・部下育成力アップ研修、セブンーイレブンの「単品管理」手法とマーケティングを活用した仮設提案力&販売力アップ研修、スーパーバイザー教育、講演、執筆、ビジネスコーチを行っている。著書に「スタッフの“やる気”を引き出す法則」(商業界)、「店長のための現場を活かすコーチング」(商業界・共著)など。

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