「新人を迎える前にやるべき3つの退職防止策」 人材育成ベーシック 松田尚文

2010年も4月に入り、今年もアルバイト採用が本格化する時期が近づいて来ました。これからアルバイトの募集を始める人事・採用ご担当の方も多いかと思います。新人を迎える前、そして新人を迎えてからは、一体どういったことに気をつければ良いのでしょうか

「退職防止が最大の採用活動となる」。これは退職防止策が退職者を減らし、人材確保を実現し、最も効果的な採用活動と同様の結果を生み出すという意味です。企業や店舗は、求人には相当のお金と時間を投入しますが、残念ながら退職防止にそれを振り向けているところは少ないように思います。特にパート・アルバイトが主戦力となる企業は、雇用に対する考え方を少し軌道修正し、退職防止に積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか。退職防止策の実行により、人材の確保だけでなく、採用や人材育成にかかる労力とコストの削減、トレーニング効率化と人材の質向上、それによってさらに魅力的な人材が集まるなど多大なメリットがあります。

特に新人パート・アルバイトに対する退職防止策は非常に重要です。防止策を考えるにあたり、その第一歩として辞める理由を知ることが必要です。「an」の調査によると、辞める理由の上位は「店長などの雰囲気が悪い」「給与が低い」「仕事が楽でない」「仕事に興味が持てない」などが占めています。特に新人は不安になりやすく、仕事を教えてもらわないと何もできず疎外感を感じます。また、勤務条件と実際が異なれば不信感も持ちますし、上司が忙しく面倒を見られない・先輩に声もかけられないといった環境ではやる気も失せます。こうした不満が生まれないようにすることが退職防止策には求められます。

退職防止策のポイントは「働く環境を整える」「仕事上の人間関係を構築する」「仕事をきちんと教える」の3点あります。つまり不安のない環境で、信頼できる人達と絆を深めて、仕事を早く覚えてそこに溶け込めるようにするのがポイントになります。

まず、「働く環境を整える」とは、全員が温かく迎える、働く場所の整理・整頓、道具を整備する、条件等を確認することです。迎える前には働く現場を整備しておき、初日には新人を迎える人を配置し、オリエンテーション(仕事と職場についての説明会)を実施します。そこで同僚や社員を紹介し、会社や店のことや仕事の内容、労働条件、賃金などに関することを確認してもらいます。数店舗で展開しているある居酒屋チェーンがこのオリエンテーションを導入するだけで、早期退職者が激減したという結果が出ています。ほんの1、2時間の説明を加えるだけで新人の定着率が上がるなら積極的に行うべきです。

次に「仕事上の人間関係を構築する」とは、具体的には新人が不安なく意欲的に仕事に取り組めるよう「パートナーをつける」「相互に知り合う」「観察し認める、褒める」などを実践することです。最初はマンツーマンのパートナー(同年齢の先輩・社員・店長)をつけて仕事を教え、コミュニケーションで相互理解を進め信頼関係につなげます。新人をよく観察し、向上したことは認め、褒めます。こうして新人との絆を深めていくのです。

そして「仕事をきちんと教える」。これはいつ誰が何を教えるのかを計画的に決めて実行することです。教える内容が文書化され、教える項目がチェックリストになっており、それをパートナーが模範をやって見せて教えるのです。また、小さな成功を体験させて仕事のおもしろさを感じてもらえるようにするとより効果的です。

これらの退職防止策を継続的に実行するためには、スケジュール化やプログラム化とともに、日頃から従業員には厳しくも温かい気持ちで接し、チームメンバーとして尊重する気持ちがベースになければなりません。皆さんも新人を迎える前に、今の環境を再度見つめ直し、「自分が新人だったらどう迎え入れられたいだろうか?」という気持ちになって考え、上記施策を是非試してみてはいかがでしょうか。

松田尚文 / Naohumi Matsuda

日本マクドナルド(株)に17年間在籍し、店長、スーパーバイザー、海外駐在(3年)、本社人事部統括マネージャーを歴任。1993年よりコンサルタントとして活動開始し、1999年人材育成ベーシック社を設立。
コンサルタントとしてメーカー・サービス業・チェーン店企業を中心に、人材育成、チェーンオペレーション開発、人事制度等のコンサルティングを行う。東洋経済社「日本のコンサルタント101名」の1人に選出される。

著書

1999年7月:『八方ふさがりを突破する本物店長マニュアル』明日香出版社
2001年:『実践!強い店長学』明日香出版社
2002年:『飲食店業務マニュアル』アーバンプロデュース社
2003年:『小売店業務マニュアル』アーバンプロデュース社

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