空間デザイナーとして活躍されているかたに、これまでの道のりや、役立っているバイト経験などをインタビューしました。

下積み時代はガツガツ挑む!

学生時代は、店舗設計を手がけるデザイン事務所でアルバイトをしていました。模型製作がメイン業務で、ひとつの模型を制作するのに平均して60時間〜80時間を要するシゴト。1日6~8時間作業して、約1週間で1作品仕上げるペースで作業をしていました。作業部屋ではベテランアルバイターと新米アルバイターが缶詰状態で作業し、模型づくりのいろはを先輩から教わりました。

図面を見ながら、模型でどのように表現するかはバイトの腕の見せ所。たとえばワインが陳列される鉄製のラックを表現するのに、一つひとつワインボトルを手づくりするのは大変です。作業効率をあげるためには、プリントアウトしたフィルムを貼りつけちゃうこと。貼りつけるほうがかえってリアルに見えるという特典つきです。そのような場数を積みながら、どんどんスキルを身につけていきました。

空間デザイナーのみならず、何かしらの「デザイナー」を目指すなら、積極性が必要だと思います。気になるデザイン事務所があれば、自分から「はたらかせてください」と門を叩くくらいの気概がないと。時折、自社ホームページの問い合わせフォームから「インターンシップをさせてください!」と美大生が志願してくれることがありますが、いい心意気ですよね。下積み時代の積極性が道を切り開くのだと思います。

人と比べない。自分のベストなタイミングがきっとある

デザイナーのキャリア形成は大きくわけて2パターンあります。ひとつは企業に勤めながらアシスタント、デザイナー、チーフデザイナー…というように一段ずつ階級を上げていくタイプ。もうひとつは小規模のデザイン事務所で経験と実績を積んで独立するタイプです。僕は3箇所のデザイン事務所でバイトをし、企業に就職したあと独立と、両方を経験しました。

もともと独立するつもりだったため、就職先の社長にも「僕は3年で独立します!」と宣言していたくらい意志は固かったです。ところが、独立を検討しはじめた2008年にリーマンショックが起こり、身動きが取れなくなり出鼻をくじかれます。そして、追い打ちをかけるように3年後に東日本大地震が発生。「今は動くべきじゃない」と事務所からとめられ、二の足を踏むことに。

そうなると、つい人と比べてしまうんですよね。早々と独立した友人のグラフィックデザイナーが雑誌の表紙を飾るのを見て焦燥したり……。満を辞して独立したのは震災から1年後、東京が日常を取り戻しつつある2012年でした。

自分が描いていたプランより少し時間がかかってしまったけど、そのぶん、担当するお客さまとよりじっくり向き合うことができました。ありがたいことに、そのお客さまの案件を独立後も担当させていただくこととなり、順調なスタートを切ることができました。

Webツールを駆使して営業活動

独立を考えるなら、PR用の公式Webサイトを立ち上げるべきだと思います。SEO(検索エンジン最適化)対策をすれば、興味のある人が自らWebサイトで検索して問い合わせをしてくれる「インバウンド」のお客さまが増えます。いわば、Webサイトが僕の代わりに営業してくれるようなものです。

また、デザイン専門のポータルサイトを活用するのもおすすめ。たとえば、設計士やデザイナーが集う『店舗デザイン.COM』は、過去の自分の作品を掲載することができます。それをお客さまが閲覧して好みの作風であれば、連絡がありシゴトにつながるようなこともあります。どの作品にどれだけアクセスがあったのか、閲覧数がわかるため、自分の作品の人気度や注目度を客観的に分析できるメリットもあります。

ブログを毎日更新することも心がけています。ポイントは、「10年前の自分に役立ちそうなことを書く」こと。見ず知らずの人に刺さるネタを探すのは大変でも、過去の自分へのメッセージなら案外筆が進むんですよ。あとは失敗談を包み隠さず書いちゃうのもおすすめです(笑)。人の振り見て我が振り直せの精神で実務に役立てることもできますからね。

デザイナーは共感力が求められるシゴト

学生のうちはなるべく多種多様なバイトをしておいたほうが、絶対に良いですよ!僕は、16歳からコンビニではたらきはじめ、居酒屋、カフェ、寿司屋、警備員、パチンコ、クリスマスにはサンタの帽子をかぶってチキンを売るなど、いろいろなことに挑戦しました。バイトリーダーを務めれば、シゴトの振り方がうまくなるし、バイトの経験が豊富な人はシゴトの適応力が高いんですよね。やって無駄なことはひとつもないと思います。

具体的に役に立っているなと思うことをいくつかあげます。前提としてあるのは、空間デザイナーは、お客さまと打ち合わせを重ねながら、一緒にものづくりをするシゴトです。お客さまの要望をヒアリングし、一緒にゴールを目指す「共感力」が必要なんです。そしてバイトの魅力は、なんといっても現場の裏側を見せてもらえること。居酒屋のホールとキッチンの両方を担当したおかげで、どこに何があればお客さまにとって使い心地が良いか、感覚的にわかるようになりましたし、それが設計にも活かせているんですよね。

あるいは、引越スタッフのバイトを通して、モノの搬入搬出の現場を知ることで、自分が設計したものが搬入用のエレベーターに乗るか乗らないかなど、配慮しながら設計できるようになります。これらは僕の強みになっています。

「本業×好きなこと」パラレルキャリアというはたらき方

最近は、本職以外にシゴトを持つ「パラレルキャリア」が増えつつあると感じています。知人のデザイナーもデザイン事務所を退職後に農業の世界に飛び込むなど、さまざまなはたらき方をしています。パラレルキャリアが一般的になるには、あと20年ぐらいかかるだろうと踏んでいますが、実は僕ももう少し柔軟なはたらき方をしてもいいかなと思い始めています。

空間デザイナーの知見を活かして自分のお店を持つのも楽しいかも……!?妻はフードスタイリストとしてはたらいているため、撮影スタジオ兼料理教室ができるスタジオや、映像作家さんの作品上映会をするコミュニティスペースにするなど、どんどん夢は広がります。好きなことに挑戦して、2〜3個武器になるものを持つことができれば、今後のはたらき方の自由度がさらに広がると思っています。