永瀬 匡

TASUKU NAGASE
俳優

役に入る前はとことん考えます
だけど、カメラの前に立てば丸裸に
それがいいんです!

誰もが認める「イケメン俳優」永瀬匡が、『an』初登場。うっとりするほど端正な顔立ちながら、ひとたびしゃべり始めるとイケメンであることを忘れさせてくれるほど「ラテン」で気さく。『ズタボロ』『天空の蜂』『RANMARU 神の舌を持つ男』など振り幅の大きな役を立て続けに演じ、絶賛急成長中の若手俳優。どの「顔」があなたの印象に焼きつくのか。

映画初主演を経験し
意識が変わってきた

小学6年生のときに映画『ラストサムライ』を見て、渡辺謙さんの演技に感銘を受けたのが俳優を目指すきっかけとなりました。平成の世で、侍になりきろうと思っても変わり者になるだけだけど、カメラの前に立てば、どれだけ侍になりきられるかが、評価の対象になります。肉体は一つなのに、いろんな人生を生きられる、なんて贅沢な職業なんだ、と思いました。ただ、どれだけ気持ちが高ぶったところで、実家は鳥取県!夢に向かってどう進めばいいのか、わからないんですよね。転機が訪れたのは、高校2年生のとき。父の経営する鉄板焼き屋が横浜に出店するのを機に、僕も転校することにしました。所属事務所とのご縁は、スカウト部に所属していた人と、たまたまた同じ美容院の同じ担当者さんだったこと。役者になりたいことは美容師さんに繰り返し伝えていたので、ご縁をつないでくださったんです。本当にありがたいですね。

主役も脇役も関係ない

これまでいろんな役を演じてきました。ターニングポイントといえるのは、間違いなく初主演映画『ズタボロ』です。主演は出番が多いので、まるで洗濯機に突っ込まれたような状態で、役に没頭しました。けれどクランクアップしてしばらく冷却期間を置くと、作品を客観的に見ることができました。その上で思ったのは、主演であろうと、番手がどうであろうと、お客さんには関係ない、ということです。『ズタボロ』で言うなら、キャストの佐藤二朗さんのファンの人は、きっと二朗さんをスクリーン上でずっと追い続けます。その人にとっては『ズタボロ』=二朗さんになる。主演と主演以外の違いがあるとすれば、それはプロモーション活動でしょうか。作品が公開されるタイミングで取材を受けたり、作品の宣伝活動を積極的に行うのは主演のシゴト。1人でも多くの皆さんに作品が届くよう、はたらきかけの先頭に立つ役目です。これまでもなんとなくですが、主演キャストが背負っているものを感じていましたが、こういう大変さもあるんだ、と身を以て体験することができました。そう多くはないけれど、ちょこちょこバラエティ番組にも出演しています。なかでも『新チューボーですよ!』では、多くの反響をいただきました。料理番組なのに、10年続けているダンスを披露しまくりました(笑)友人である森星ちゃんがレギュラー出演していることもあり、素の自分が出ちゃった感じですね。役者業ばかりしていると、俳優や制作スタッフ以外の人と顔を合わせる機会がありません。バラエティ番組は、芸人さんや文化人のかたなど、さまざまな顔ぶれで収録しますから、みなさんの立ち居振る舞いを見ながら勉強させていただいています。たとえば弁護士の先生なら、テレビ出演時には、カメラの前で少しおどけた発言をして場を盛り上げますが、本業ではめちゃくちゃシビアな顔でシゴトをしているわけですよね。そういった多面性こそが、人間らしいと思うんです。先日、初めてレポーターのシゴトをしました。福岡市の保育事情を取材するというもので、その道のプロの皆さんにじっくり話を聞く機会は、とても貴重でした。こういうことの積み重ねはきっと役づくりにも活きてくると思え、何もかもが興味深かったです。役に挑む前に自宅で、ものすごくいろんなことを考えるんです。台本を繰り返し読みながら、監督の期待に応えられるよう引き出しを増やしておく感じです。けれど、役はつくり込みません。いざカメラの前に立つと、準備してきたことは、全部一旦忘れます。その人に自然と入り込むほうが「人間」でいられる感じがあるんです。

名匠・堤幸彦監督の
「切り替え力」に脱帽!?

2015年から2作連続で堤幸彦監督とご一緒させていただいています。映画『天空の蜂』と『RANMARU 神の舌を持つ男』です。そこで、堤監督の「切り替え力」に驚かされました。『天空の蜂』は、原発テロ事件という危機に立ち向かう人間模様を描いたサスペンスということもあり、堤監督は寡黙でシリアスなオーラを放っていました。僕も、巨大ヘリコプターに取り残された子どもを助ける航空自衛官役だったので、おふざけモードゼロ、めちゃくちゃ必死に演じました。ところが、『RANMARU――』の撮影現場では、堤監督のキャラが豹変。『RANMARU――』はギャグミステリー、ギャグを連発する作品ですから、堤監督の遊び心が止まらないんです。僕と市原隼人さんがケンカするシーンでは突然、「市原くん、英語でCalm down!(落ち着け)って言って!」などと無茶ぶり。それを見て「いいね~。洋画だね~」と腹を抱えて笑っているんですよっ。役者全員が堤監督の飛び道具にされる感覚でした(笑)現場づくりのプロ、さすがだなと思いました。今後のビジョンは、明確には言えないんですが、目指す役者像は、どんな役を演じていても「永瀬匡」が前面に出て、どんなときも「永瀬匡」の色を失わずにいたいと思っています。髪型を変えたり、ヒゲを伸ばしたり、時には太ったり、年齢を重ねれば髪が薄くなることもあるかもしれません。それらを含めて人間・永瀬匡だと思うから、良くも悪くも、自分の過去をひきずりながら、カメラの前に立ち続けたいと思っています。